真に美しい鯖《さば》色の光

 取り出したのは小箱であったが、真に美しい鯖《さば》色の光が、小箱の中から射るように射して、部屋を瞬間に輝やかした。 小箱の中を覗いている、老武士の顔の嬉しそうなことは! この老武士は何者であろう? 他ならぬ松平|碩寿翁《せきじゅおう》であった。 それにしても何のためにこのような所へ、碩寿翁...

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老武士は?

「お泊まりなさいまし」「柏屋でございます」「へいへいこれはお早いお着きで」――などと云っていた出女の声も、封ぜられたようになくなって、萩村の駅は寂静《ひっそり》となった。 こうして夜が次第に更け、柏屋でも門へ閂《かんぬき》を差した。客も家の者も寝《しん》についたらしい。 で、何事もなさそうであっ...

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物語少しく後へ戻る

 物語少しく後へ戻る。 飛騨の萩村は街道筋における、相当に賑やかな駅《うまやじ》であって、旅籠《はたご》屋などにもよいものがあった。 宮川茅野雄が難を受け、森林の中へ姿を没した、ちょうどその日のことであったが、この萩村の四挺の駕籠が、旅人を乗せて入り込んで来た。 夕暮のことであったので、旅籠屋...

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