美しさも神聖さも完全にある

 間髪を入れず風を切って、物を投げる音がヒューッとした。 しかし、続いて清浄と威厳と、神々《こうごう》しさを備えたような声が、どこからともなく聞こえてきた。「物は完全に保つがよい! 美しさも神聖さも完全にある! ……碩寿翁、碩寿翁、物をこぼつな!」 この時碩寿翁は刀を抜いて、部屋の一所に立って...

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何となく俺には恐ろしい

「何となく俺には恐ろしい。碩寿翁様が相手だからな」「と云ってうっちゃっては置かれないよ。……ここまで尾行《つけ》て来た甲斐《かい》だってないよ」「それにしてもどういうお考えから、碩寿翁様には飛騨などという、こんな山国へ来られたのだろう?」「私達には関係《かかわり》はないよ。……襖をあけて覗いて...

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他の旅籠屋へつけようとする

 ――他の旅籠屋へつけようとする。と、どうだろう、碩寿翁自身が、駕籠の中から云うではないか。「これこれ駕籠屋どうしたものだ。先へ行く駕籠の入った旅籠へ、すぐこの駕籠をつけてくれ」 同じ旅籠屋へ泊まるのであった。 こうして道中をしているうちに、長崎へは行かずに飛騨の山中の、萩村の柏屋へ来たのであ...

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