別天地

 四方を森林に囲まれているので、丹生川平《にゅうがわだいら》は丘の上にあったが、極めて陰気に眺められた。 切り株に腰をかけながら、話している若い男女があった。「あなたには大分変わられましたな。昔より陰気になられたようで」「……でもあなたがおいでくださいまして、陽気になりましてございます。……あ...

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美しさも神聖さも完全にある

 間髪を入れず風を切って、物を投げる音がヒューッとした。 しかし、続いて清浄と威厳と、神々《こうごう》しさを備えたような声が、どこからともなく聞こえてきた。「物は完全に保つがよい! 美しさも神聖さも完全にある! ……碩寿翁、碩寿翁、物をこぼつな!」 この時碩寿翁は刀を抜いて、部屋の一所に立って...

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何となく俺には恐ろしい

「何となく俺には恐ろしい。碩寿翁様が相手だからな」「と云ってうっちゃっては置かれないよ。……ここまで尾行《つけ》て来た甲斐《かい》だってないよ」「それにしてもどういうお考えから、碩寿翁様には飛騨などという、こんな山国へ来られたのだろう?」「私達には関係《かかわり》はないよ。……襖をあけて覗いて...

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